Interview「熱海で暮らす」
日々の仕事と暮らし、 網代の山とまち。 “ 境界線” が溶けて 混ざり合う面白さ
板橋さんファミリー(真さん、真理さん、晴真くん、プリちゃん)
生の時間配分を変えるために選んだ移住。縁もゆかりもない網代での暮らしから生まれたものは、おだやかで豊かな家族の時間。そして、ゆるやかに人や地域とつながる面白さでした。
標高 250m に佇む網代の一軒家と出合い、2020 年の春に東京から移住した板橋真さんと真理さん。20代の頃、ハードワークの気分転換に誘われた登山がきっかけで山に魅せられた真さんにとって、「身近に山があること」はごく当たり前の条件だったといいます。移住前は、兄弟で運営する人材紹介・採用支援の仕事と、自然や登山で地域を元気にする仕事のダブルワークに没頭し、帰宅はいつも深夜 2 時過ぎ。
「自分は仕事に夢中で楽しかったけれど、生まれたばかりの息子の育児は彼女(真理さん)任せ。家族の時間もほとんど持てない状況に『あ、ヤバい』と感じる瞬間があって。人生の時間配分を変えるために、最初に暮らす場所を見直そうと思ったんです」
一方、「私は田舎育ちの都会好き。最初は移住に賛成ではなくて」と話すのはパートナーの真理さん。じつは移住の際、「『もう帰りたい』って言ったらいつでも東京に戻る」と条件付きだったそう。
「でも、子どもの幼稚園を通じて地域の人とのつながりが増えると、仲良くなればなるほど心地いい“ 人のよさ” を感じて私自身が救われています。山の緑にもすごく癒されるし、幼稚園で泥んこ遊びを楽しむ子どもの姿を見ながら、都会とは違うよさも感じるようになりました。仕事で東京へ通ったり、東京の友達が週末遊びに来てくれたり、距離感もちょうどいいんです」
移住から一年半が経った頃、真理さんは「あの条件はもういいよ」と真さんに告げました。そして真さんも、2022 年から網代・南熱海のまちづくり会社「あじろ家守舎」の理事や、森林保全を行う「熱海キコリーズ」の一員として、地域とより深くかかわるように。
「親が転勤族だったので場所にこだわりはなく、『地域のために』というよりも、ここにいる『人』やまちを包む『自然』への思いが原動力になっている気がします。移住してから仕事と暮らしの境界が溶けてきて、今まで以上に自分に正直に生きるようになったことも、気楽に楽しめている理由かもしれません」
そんな真さんの「やりたい」を形にしたのが、熱海おんぱくで開催される「南熱海・網代ロゲイニング」。地図を片手に、仲間と一緒に指定されたポイントをまわって得点を競うもので、幅広い参加者が同じフィールドで楽しめるアクティビティです。主催者である真さんのロゲイニング歴は、じつに15 年以上!
「登山と温泉だけ楽しんで帰る登山者を見ながら、ロゲイニングなら山とまちをつなげられるんじゃないかと思ったんです。何より、自分の暮らしの中にある網代の山も知ってもらいたい、という思いもありました。ロゲイニングで山とまちをつなげてみると、さらに自分の中の境界線がゆるやかになったし、逆に僕は今、海が好きになりはじめているんですよね」
板橋さんが主催する『南熱海・網代ロゲイニング』の詳細はこちら!↓